パッシブプリを作ってみました。
元々可変型のアッテネーターが欲しいと言うのもありましていつか作ろうとある程度材料は揃えてありました。
先日パワーアンプの改造も一段落ついたのでいい加減可変型アッテネーターもといパッシブプリを作ろうと。パワーアンプのボリュームが渋いからね…
パッシブプリとは?
何なんでしょうね?
最近ではDACやプレーヤーからパワーアンプへ直結したりとプリアンプの必要性が薄れていて、プリアンプその物は要らないけど前段にコントローラーは欲しいよねって事で生まれたんですかね?
大雑把に言うとプリアンプとはパワーアンプの前段に入れて特に信号の弱い機器からの入力を増幅してパワーアンプへ送るものです。しかし実際にはセレクターやらトーンコントロールやらが付いたコントロールアンプです。増幅のみのプリアンプと言う物は寡聞にして知りません。
そのプリアンプからアンプを省いたら電源も要らなくね?
って感じすかね…勝手な想像ですが。
実際にはプリアンプから増幅機能を除いたと言うより、プリアンプにあったコントロール機能のみを取捨選択したと言う感じでしょうか。そのため既製品を使うと言うより各自自作すると言う感じでもありますね。
そうそう、何故かパッシブプリアンプとも言われますがアンプは省いたのでパッシブプリと呼称する方が妥当だと思います。*1
どういった機能にするか
可変型のアッテネーターは必須です。先日のFX502S Proの改造においてボリュームの高音質化が出来たので同じ物を使えばお手軽に高音質(当社比)の可変型アッテネーターが作れそうです。
ロータリースイッチに抵抗やらトランスを組み合わせる本格的な可変型アッテネーターは手間もお金もかかるしロータリースイッチの操作感もアレですし。
アッテネーターの他にはローブーストを加えたいと思います。バスブーストとも言いますか。とにかく現状より低域を少し底上げできればと。実際にはブーストではなくLPFによって低域以外をカットするだけなんですが、相対的にはブーストしてると言うと事でどうか一つ。
ローブーストはスイッチで切り替えられるようにはしますが、常用前提で不自然な音にならないようにします。また調整も可能なようにします。
と言う事で家にあるパーツを見ながら回路図をLTSpiceで書いてみました。いくつか回路図エディタを弄ってみたんですが結局これが一番しっくり来ると言うか…
そのLTSpiceを数年ぶりに使おうと思ったら64bit化していてバージョンがXVIIになっていました。以前使っていたのがIVだったような… 絶対途中すっ飛ばしただろって思ったら本当にすっ飛ばしていました。IVの次がXVIIとは…
とにかく唯一辛うじて扱える回路図エディタのLTSpiceでざっくりと回路図を書いてみました。ボリュームが素直に表現できないので仮の表記になります。
inが音声入力でoutから出力します。回路図は片チャンネルのみです。
R1とC1でローブースト用のLPFになります。R2は10kΩの可変抵抗に並列で4.7kΩを繋ぎます。これでLPFの効き具合を調節できるようにします。回路図にはありませんがC1をショートするスイッチを付け加えて、ローブーストのon/off切り替えとします。ショートでoffです。
C1は本当は1 - 2μFぐらいを想定していましたが手持ちが4.7μFか0.47μFかと言う微妙な物しか無かったので取り合えず4.7μFに。R2も本当は3kΩ程度の可変抵抗が良いんですがこちらも手持ちであるもので。*2
R3とR4の2つで1つの10kΩの可変抵抗を表します。上からピンが3、2、1と言う感じで見るとわかりやすいです。そしてR5が3と2、R6が2と1の各ピンを並列に繋ぐ10kΩの固定抵抗です。
一番大変なケース加工
用意していたアルミケース、タカチのUC-9-5-12DDに各パーツ取り付け用の孔を開けます。正直これが一番面倒と言うかいまいちやる気の出ない作業です。削りカスが出なければなあ…
ハンドドリルで孔を開けるのに本来なら細いドリルから徐々に太くしていくんですが面倒なのでいきなり孔のサイズのドリルを使いました。
RCA用の10mmは結構ずれました。徐々に開けてもどうせずれるしね。ボリューム用の7.5mmも少しずれましたがほんのちょっとです。トグルスイッチ用の6.5mmはほぼずれていないと思います。
薄いアルミ板なんで案外いけますね。今後もこのやり方にしようと思います。10㎜は流石に2段階にするかもしれませんが。
パーツ配置
孔を開けたパネルに各パーツを取り付けます。ボリュームは配線しやすいように逆さに。そのせいでトグルスイッチと干渉しますが問題無い範囲です。
ケースにセットして配線を考えます。基本的に泥縄です。大体現物合わせでやっつける感じです。
GNDは太い銅線を使います。実は銅パイプなんですが問題無いでしょう。
コンデンサは積層セラミックコンデンサ(以下MLCC)、抵抗はビスパの音響用金属皮膜抵抗です。可変抵抗もビスパの物です。配線は主にφ0.2mmのUEWでLPF部のみ0.4mmを使用しました。
GNDの銅線をはんだ付けしてから各パーツを取り付けます。ここで何をトチ狂ったか回路図上の抵抗R1を1kΩの物にしました。
回路図通りの4.7kΩだとC1が4.7μFなのでカットオフ周波数は7.2Hzと相当低いです。1kΩなら33.8Hz*3になるし固定アッテネーターが入ってるからあんまり大きい抵抗入れたくないな、なんて思いまして。LPFの効果量の事を失念していました。
更にこの時もう一箇所間違いを犯していました。が、それにも気づかず配線を終えて音出しテストに…
最初のテスト
まず音はちゃんと出ます。変な音でもありません。が、ローブーストの効果がよくわかりません。
ローブースト用のボリュームを右に回すと効果量が増える、つまり音量が小さくなると言う接続にしました。右に回して効果を強め音量の小さくなった分をアッテネーターのボリュームも右に回して回復させると言う一連の操作に一貫性を持たせるためです。
効果量をギリギリの量まで増やしてもどうもよくわかりません。
いや、低域は増えてはいるんです。スイッチを切っても…
色々曲を聴きながらスイッチを操作しながらやっと効果を感じる事ができました。そしてスイッチが逆に取り付けられている事にも気づきました。
トグルスイッチって倒した方と逆のピンが導通するんだっけ… 扱うのが久しぶり過ぎて勘違いしてました。
更にここで効果量そのものが減っている事にも気づきました。
気を取り直してさっさと修正します。スイッチを逆にして配線をやり直し、抵抗R1をちゃんと4.7kΩにしました。そしてラインセレクターに入っていた固定アッテネーターを取り外し配線し直しました。
カットオフ周波数は7.2Hzと相当低いですが今度は効果がもう少しわかります。とは言え弱いです。
音に不自然さは無くそれこそ曲によってはローブーストに気付かない事も多く常用はできます。でも折角のローブーストなのに控えめ過ぎなのでコンデンサを変更します。
それでも一応音はちゃんと出たので操作しやすいようにつまみを取り付けました。アッテネーターの方は用意してあったんですがローブーストの方は手持ちの小さい物しかなくて、やけに浮いてるしボリュームの回り止めが見えたりとちょっとあんまりなので後で別のつまみにしたいと思います。
ローブーストの調整
コンデンサを交換するにあたり接続するスイッチをソケット化する事にしました。現状のスイッチに細工するのも面倒だったので別のスイッチに丸ピンソケットを取り付けました。コンデンサと配線用と各ピンに2穴づつです。
ソケットに対応するべくUEWの先端に丸ピンをはんだ付けしておきます。
適当なコンデンサの容量は?
取り合えずダメもとで0.47μFのMLCCを試してみます。
うわっ響く。ぼやける。こりゃだめか。取り合えず効果を減らして…
やっぱりカットオフ周波数が高いようです。72Hzなので100Hz以上もブーストの影響が強いです。なるべく不自然さが無いところまで効果を弱めても時々違和感があります。少なくとも常用はできそうにないです。
更に0.47μFを並列に追加して0.94μFにしてみます。カットオフ周波数は半分の36Hzです。
やっと実用域に入ってきたなと言う感じです。ただ程々のブースト量を得ようとするとやっぱりたまに違和感を覚えます。もう少し容量を増やした方が良さそうです。
手持ちのコンデンサを探っていたら指月の積層フィルムコンデンサSMC 0.68μFを2つ見つけました。これに0.47μFのMLCCを加えれば1.15μF。もう一押しECHU 0.1μFも追加して1.25μFとします。
各コンデンサを合体させてソケットに挿さるようにします。SMCがちょっと大きいので干渉しないように配線も位置を変えてソケットも1段下駄を履かせました。そして早速テストです。
これこれ!望んでたのはこれですよ。
カットオフ周波数は27.1Hzになります。コンデンサの種類が変わった影響も少しはあると思いますが、違和感なく聞こえるにはこのぐらい低くないとダメみたいです。当然スピーカーとの組み合わせ次第だとは思いますが。*4
色々聞いてみた
ローブーストした事による音の劣化はわかりません。可変型アッテネーターの追加による音の劣化もわかりません。システム的な物か耳の問題か。むしろローブーストしなくても若干低域が増えて音が力強くなった感じがするぐらいでして…
音の劣化は少し心配だったのでこの結果には安心しました。
LPFにしてもHPFにしてもカットされた音にはあまり影響は無く通過させる音に影響が強く出る感じでしょうか。通過した低域には影響がそれなりに出ているんでしょうが、そもそも私の耳ではね…
ローブーストも程々に控えめで自然です。これは適切なカットオフ周波数と調節機能によるものでしょう。効果量の調節はかなり実用的です。
今回は1.25μFでカットオフ周波数を27.1Hzにしましたが、100Hz以下を違和感なく増やすにはカットオフ周波数は30Hz以下が良いようです。今回の回路だとコンデンサを1.15μF以上にすれば良いですね。
最終的な回路図も載せておきます。C1が4.7μFから1.25μFになっただけですが。
可変型アッテネーターも中々良いね
パワーアンプのボリュームを全開しておかない事で普段使う音量あたりの操作がしやすくなります。
渋くないボリュームと大きいつまみで操作感も良いです。やっぱりつまみにはある程度の大きさと質量があると良いです。*5
今回使ったつまみはAmazonで買った物ですがもう扱っていないようです。1080円と言う値段の割に高級感があって気に入ってるんですが…
追加で欲しいので探してみたもののAliExpressで似た物を見つけたぐらいです。こっちは厚みが16mmとちょっと薄めです。
そう言えばボリュームにはギャングエラーが付き物ですが小音量時だけじゃなくて全開付近でも同じ現象は起きているはずなんですよね。音量の差となって表れないようですが、その辺の美味しくない領域を使う事にちょっと抵抗があって4時ぐらいまでしか回しません。
エージングしながらつまみを待つ
先日改造したFX502S Proがボリュームを変えて1日経ってから音の立ち上がりが良くなった事から抵抗にもエージングがあるようです。
今回LPFのコンデンサも含めてつまみが届くのを待ちつつエージングの効果を見ようとちょっと時間をおいてみましたがわかりませんでした。
千石にいくつか注文していたつまみが届いたのでその中から一番しっくりくる物を選びました。が、よりによってそれに傷があります。昔からこう言うハズレをよく引くタイプです。大きなハズレは引かないものの細かいハズレをちょくちょく引いていくスタイルです。先日のボリュームやすぐもげたバナナプラグとか…
とにかくつまみを交換します。傷は…気にしない!
つまみを取り付けると中々良い感じです。これでツヤツヤじゃなければ… ちょっとテカりすぎじゃないですかね。
選んだつまみはサトーパーツのK-3です。画像でも艶があるなとは思っていましたがツヤツヤテカテカです。画像の倍はtytkです。
ケース用のネジも届いたので交換します。側面で普段見えないんですけど標準のネジが黒くてやけに目立ったのでステンレス素地の物に変更します。