先日弄ったパワーアンプのFX502S Proに更に変更を加えました。
後はボリュームを変更するだけかなと思っていたんですがTPA3250のデータシートを眺めていて気になる所があったのでちょっと弄ってみようと思ったのが発端です。
HS bootstrap supply
TPA3250のデータシート上にあるスピーカー出力と0.33μFを介して接続されている23・24、43・44の各ピンの*HS bootstrap supply (BST)*という物が少し気になりました。結構音に関わるんじゃないかと。
そもそもbootstrap supplyが何なのかわからないのでぐぐってみるとDCDCコンバーターなんかが検索に引っ掛かってデジタルアンプでの例が見つけられませんでした。*1
DCDCの例で言えば出力強化と言う感じでしょうか。語源から考えても自助供給と言ったところでしょうか。
データシートに依ると各ピンの説明部分でHS bootstrap supply (BST), external 0.033 μF capacitor to OUT_A required.
と0.033μFと言う単位まで指定して必要だと言っています。
BSTコンデンサ変更
FX502S Pro Rev.3の基板上ではC27・C41、C11・C25とプリントされています。何れのリビジョンでもICのピンを辿ればすぐわかる位置にあると思います。
ECHU 0.033μFは失敗
0.033μFのコンデンサをECHUに交換してみようと思ったんですが、これ、大きさが全然違いますね。元のが多分2㎜でECHUが3.2㎜ですか。
やるだけやってみましょうって事で取り換えてみましたが…
厚みが酷いです。ヒートシンクと干渉するので絶縁テープを貼ってヒートシンクが傾いた状態でテストしてみます。
音は微妙に良くなっています。高域が少し柔らかくなって低域も少し増えた感じです。取り合えずヒートシンクとの干渉を解決するために標準より厚めの銅のバッファ板を買いました。
届いた銅のバッファ板を取り付けるために絶縁テープを剥がしたところECHUが取れました。正直ECHUの0.033μFにそこまで魅力を感じなかったので別のパーツを試してみます。元に戻すと言うのは無理です。何故なら、1つ行方不明だから。
ECHU 0.01μFも失敗
容量は減りますが厚みも減ります。相変わらず3.2mmなのではんだ付けが微妙ではありますが…
ヒートシンクとは干渉しないので特に問題なく再組立てをして音出しです。が、エラーが出ます。電源再投入でエラーが消えたので今度こそ音出しです。一聴して音が良いです。これを常用できれば良いなと思っていたらまたエラーが出ます。ヒートシンクを触るとかなり熱くてICが異常発熱しています。そりゃ0.033μF使えって言ってるんだしね…
この問題を解決するために更に2つスタックして0.03μFとしてなら…やりませんけど。*3
そうそう、行方不明だった元のコンデンサを発見しました。
ECHU 1000pFこそ本命
ECHUの単体使用はあきらめて標準の積層セラミックコンデンサに並列に追加する形ではどうかと。小さめのチップなら難なくスタックできますし。
元に戻し問題が無い事を確認してから1000pFを追加します。
2段になるとまたしてもヒートシンクとの干渉が気になりますが一番厳しいところでも0.4mmぐらい隙間があって大丈夫でした。
音はECHU 0.033μF単体より0.01μFの時にやや近いです。高域が柔らかくなり低域が出るのはECHUの一貫した特徴でしょうか。ECHU 0.01μF単体には及びませんがまずまずなのでこのまま使用します。
1日エージングを済ませると低域に力強さが出ました。この辺もECHUの特徴でしょうね。最終的にエージングには3日程かかりました。更に音に深みと言うかディティールが増すと言うか。解像度も増して定位も良くなりました。
最初からこうしておけば良かったかな。容量が0.034μFになる事の問題は無いでしょうし、作業も簡単ですし。
出力部の1000pFとZobelフィルター
アンプの出力部のLPFの後のおまじない回路なんですが、結果から言うと弄るだけ無駄でした。
Zobelフィルターって何?
Zobelフィルターの存在は知っていますが何を以ってZobelフィルターと言うのかよくわかりません。アンプ出力に並列に繋ぐ、抵抗とコンデンサを直列に組み合わせた発振防止回路と言う事で良いんでしょうか?
直前にコンデンサを並列に繋いである例も見ますし、FX502S ProもTPA3250のデータシート上でもそうなっていますし、以前スピーカーに繋いだおまじない回路も同じ構成です。そこまで含めてZobelフィルターなのかどうなのか?
FX502S Proの実装
FX502S Proでは出力部のLPFの次に1000pFのコンデンサがありますが結局直前のコンデンサと合わせてLPFの一部として動作する事になると思います。データシート上にもある物なので敢えて別に1000pF付ける事に意味があるんでしょう。*4
この1000pFがひょっとすると音に関わるんじゃないかと言う気がしまして変更してみる事に。
1000pFの交換
1000pFの交換にあたってFETが邪魔で取り合えずヒートシンクだけでも外せればと思ったところこれが大変でした。例のごとくパターンが弱い・スルーホールが小さいの組み合わせでヒートシンクの心棒を外すのが大変です。
結局スルーホールに損傷を与えて取り外せました。そして1000pFも取り外して電源を入れるとエラーが出て音が出ません。
どうやらヒートシンクが裏のパターンに導通していないと駄目らしく、裏面にはんだ付けするとエラーも無く音が出ました。*5
音は特に変わりません。やっぱり音に影響はないのかな… でも外しちゃったしなあ。
標準の1000pFの大きさに対してECHUの1000pFが今度はやけに小さいんですが小さい分には取り付けは簡単です。
しかしECHUのはんだ付けは「じゅわ」って心臓に悪い音がするのは何故なんでしょう?熱に弱いアピールですか?
そんな事を思いながらECHU 1000pFに変更しました。音は…やっぱり変わりません。
直前のLPFに0.1μFのECHUを使っていると言うのも一つの要因ではあると思いますが、やはりこの部分は(以降のZobelフィルターも含めて)音にそれ程関わらないと言う事なんだと思います。
ボリューム交換
再びボリュームを変更したいと思います。と言うのも以前の改造でボリューム基板を酷く損傷させたのと、フロントパネルに対して曲がって取り付けられているためこれを直したいと思いまして。
標準のボリューム基板を使わずにコネクタとケーブルと言う形式にします。先日はコネクタ用の圧着工具が無くて断念しましたが、ケーブル付きのコネクタを買ったのでこれで圧着工具不要です。
使うボリュームはビスパの10kΩの物です。音質が良いマルツの物と同等らしいですが届いた物を弄ってみると軸がやけに渋いです。抵抗値は小さめの方が音が良いらしいので10kΩにしました。
ボリュームに小細工
更に音質向上を狙って各ピンに並列でビスパの薄膜チップ抵抗10kΩを繋ぎます。ボリューム単体だとやりづらそうなのでビスパのボリューム基板を使いました。
可変抵抗(ボリューム)の音が固定抵抗に比べて悪いなら並列に固定抵抗を繋いでそっちを通る信号も使えば良いんじゃない?と言う単純な発想です。特にボリュームを絞った時に固定抵抗を通る割合が増えるので改善が見込めます。
メイン基板にコネクタ取り付け
メイン基板にXHコネクタを取り付けたところケースと干渉します。コネクタをちょっとずらしたりしても駄目だったので干渉部分をカッターで切除しました。
またボリューム基板もオペアンプソケットに干渉します。なので逆さに取り付けました。ケーブルが逆向きになりますがギリギリで何とかなりました。
音の方は?
音はかなり良くなりました。鮮明で生々しくなり低域も増え低音に厚みが出て今まで音痩せしてたんだと言うのがわかります。
10kΩにしたからと言うより並列の固定抵抗が効いているんだと思います。そのためかボリュームを絞っても音が痩せる感じがしません。ボリュームの動きは相変わらず渋くてツマミ無しだとかなり回しにくいですが。*6
他にも定位がよりはっきりしたりと、今までのボリュームで失われていた情報が如何に多かったかと言うのがわかります。
こんな簡単な方法でこれだけ高音質化できるとは意外でした。誰かやってるだろうと調べても例が無かったので… もしかして凄い発明しちゃった?
フロントパネルに対して斜めだったのはだいぶマシになりました。まだちょっと斜めってるけどもう十分です。それよりツマミ付けてもまだ渋いんですが…
ついでに
結局使わなかった銅のバッファ板を使ってケースにICの熱を伝える方法を変更しました。今まではアルミヒートシンクを嵌め込んでシリコーンシートを介して天板へと言う経路でしたが、銅コイルを経て銅バッファ板、天板と言う形になります。各部品は熱伝導ボンドで接着しています。銅同士ならはんだでも良かったかも…
効率はあんまり変わってないようです。ケースを触った時の体感温度とヒートシンクを触った時の体感温度に変化がありません。しっかり固定されたので扱いやすくなったのが唯一の改善点でしょうか。
これで終わり
取り合えず自分が考えうる範囲ではこのぐらいが限度です。後はオペアンプを交換するぐらいですか。
と言う事でFX502S Proの機器本体を弄るのは今回で終わりだと思います。大した事はやってないのに結構音が良くなった事を考えるとTPA3250の潜在能力は随分高いと言う印象です。
しばらくこのアンプをメインで使っていくつもりです。
蛇足
前回も今回も音のチェックにYoutubeを多用しました。その時利用した動画を一部紹介します。Windowsなのでブラウザ表示ではなくMPC-BEでWASAPIの排他モードを使いましたが、ブラウザでも十分問題なくチェックできます。
一応改造前の様子も記していますが完全なノーマルではなくてボリュームをマルツの物に、オペアンプをOP275に変更した状態です。
弦楽器 1
まずはバイオリン。高音を強めに弾いた時のキンと言う音がちょっと強めに入っています。これがやたらキンキン言うようでもあんまり気にならないようでも駄目だと思います。改造前だとちょっとキンキン言いすぎてました。
弦楽器 2
次はチェロ。33秒からのギコギコ言う部分がゴチャついてなければ良いと思います。改造前だとちょっとゴチャついてました。
シンセ 1
次はエレクトロ・ロック。かなり感覚的ですがシンセの音が気持ち良いかどうか。余計な音がせず濁ったり変に響いたりしなければ良いと思います。こちらは改造前でもそれなりに良かったです。
シンセ 2
こちらもシンセ。やはり音の濁りや変な響きが無ければ良いと思います。加えて音のシャープさ。改造前だとこのシャープさが少し甘かったです。
人の声 1
次は同じ曲ベースのメドレー。1:23以降が濁らず各パートの分離が良ければ良いと思います。改造前はちょっと分離が悪く濁っていました。
人の声 2
最後に音量注意。セリフが8割ぐらい聞き取れれば良いと思います。改造前では6割ぐらいでした。
弦楽器、シンセ、人の声と特徴的な物を選びました。これらで問題無ければ後は大抵問題無い感じです。後は低域や高域がどの程度出るかでしょうか。その辺は色々聞けば感覚的にわかりますし、ピンクノイズを流してスマホのスペアナで見るのが簡単です。
今まで使っていませんでしたがちょっとYoutubeで低域のチェックに使えそうな良い動画を見つけたので載せておきます。この曲ってこんなに格好良かったっけ?
一番低い音で64Hzぐらいでしょうか。家のシステムだと残念ながら十分と言える音量は出ません。これはスピーカーに因るところが大きいと思います。