既製品のスピーカーに別に購入したユニットを組み込んでみました。
そろそろ新しいスピーカーが欲しいなと思いつつ数年が経ちましてパワーアンプも新調したこの機会にスピーカーも新しくしようと。新しいのはユニットのみですが。
スピーカーを新調するにあたり10㎝程度のユニットを使ったブックシェルフ型を想定していました。スペースと音の妥協点でその辺りかなと。そしてユニットはできればフルレンジが良いと思っていました。
10㎝程度のユニットのブックシェルフ型と言うと2ウェイが主流でしょうしこれまで使っていた物も2ウェイです。ただウーファーとツイーターを組み合わせた2ウェイはクロスオーバー周波数あたりの音質が少々気になりまして。それならフルレンジの方が自然な音が期待できると思っています。
小口径のフルレンジだと低域不足解消のためにバスレフにしている製品をよく見かけますがバスレフもちょっと好きではないのでパッシブラジエーターにしようと思っていました。しかしこのサイズではまず見かけません。少なくとも私の購入対象になる価格では。
10㎝ユニットを2つ取り付けられるエンクロージャーが安価で手に入れば良いのですがこれも見つかりません。そんなおり10㎝ユニットを2つ搭載したDENONのUSC-M7がヤフオクで安かったのを見つけたので購入してみました。
DENON USC-M7
USC-M7は10㎝のウーファーユニットと10㎝のコアキシャルユニットの変則的な2ウェイ構成です。片方のユニットをパッシブラジエーター化してもう片方をフルレンジにすれば希望の物になります。
また折角コアキシャルユニットがあるのでこれを生かすためにユニットのツイーターのみを使うようにしてみます。と言ってもただの2ウェイではフルレンジにする意味が薄くなってしまうのでツイーターのカットオフ周波数を高く設定して準スーパーツイーター的な使い方ができないか試してみます。
取り合えずUSC-M7をそのまま鳴らしてみます。
低域から高域までしっかりと鳴るスピーカーです。ただ高域が強いように感じスマホのスペアナで簡易測定するとそんな事は無くほぼフラットでした。ツイーターの音質が大分固めなんでしょう。
解像度は今まで使っていたLS-SG550より高く低音も変に響かないので高音が気になる以外はまずまずです。もう一点エンクロージャー側面の振動が気になるものの音に影響は無さそうです。
ネットワークを変更するだけで化けるような気もします。
分解
音の特徴がわかったところで分解します。
ユニットを外してみると中には吸音材がたっぷり入っています。ただユニットのマグネットにブチルゴムらしきシートが張り付けられていてこれが微妙に溶けていて気付かずにあちこちに付けてしまいました。ZIPPOオイルで落ちるものの完全に落とすのは難しいのでこれ以上被害が出ないようにシートは全て取り除いておきました。
ターミネーター部分にネットワークが組まれています。良く見るとコンデンサが交換されていました。3.3μFのフィルムコンデンサです。*1 何かに使えそうなので取り外して保管しておきます。
補修・再構成
エンクロージャー表面の補修
エンクロージャーの外観は結構傷みが目立ちます。ヤフオクでは不鮮明な全体写真と一部の拡大写真がありましたがそこに写されてない箇所が一番ダメージが大きいです。全体画像が不鮮明で傷か光の反射か判別できなかったので傷があるつもりではいましたが、傷と言うか木目シートが欠けています。
表面がやけに汚いので研磨シートで表面の汚れとコーティングを落としてワックスを塗ってみました。が、ワックスは失敗です。木に塗るのと違って木目シートにはうまく塗れません。この時木目シートの欠けも誤魔化しておきました。
新たにネットワークを組む
ユニット取り付けの前に配線とネットワークを新しくします。
線材はNFJで販売しているWesternElectric 銅単線ツイスト ビンテージケーブルを使いました。細すぎてファストン端子はすんなり付かないと思います。はんだ付けするのでこの辺は割とどうでもいいですが。専用工具が無いのでペンチで線を巻くようにかしめました。
ネットワークはラグ板に組みました。ラグ板には接着剤でスペーサーを付けておいて直接エンクロージャー内部にねじで固定できるようにしておきます。
ネットワークですがフルレンジユニットにはそのまま出力し、コアキシャルユニットのツイーターに対してのみHPFを通すシンプルな物です。クロスオーバー周波数を高めの15khz程、12dB/octと言う設定にします。0.68μFのフィルムコンデンサに0.1mHの空芯コイルを使いました。*2 フルレンジ側はネットワーク経由しないのでうまくクロスオーバーしないとは思いますが。
謎の回路の追加
ネットワークとは別におまじない回路をターミナルに入れておきます。抵抗とコンデンサを並列にしただけの物ですがちょっと音が良くなると言うか高級になると言うかそんな感じのおまじない回路です。
この回路は今までも使っていたんですが付けたところで違いは殆どわからないものの取り外すと音が安っぽくなるんで効果はあるようです。回路のネタ元は通電してみんべ ヘッドフォンアンプ⑨コンデンサを極めるからです。
私は470pFのスチロールコンデンサと0.015μFのポリプロピレンフィルムコンデンサに10Ωの音響用金属皮膜抵抗を使っています。
エンクロージャー内部の仕上げ
完成した物を組み込む前にエンクロージャー内部の吸音材を取り除いてバスレフポートを塞いでおきます。塞ぐのにはベスト カグピタコパイプ脚キャップ 24mm~26mmを使いました。ジャストフィットです。
ネットワークとターミナルを固定したら新たに吸音材を入れます。吸音材は俗に「リプトン吸音材」と言われる物です。立ち寄った店でリプトンより安かったアバンスのアールグレイを買っていたのでこのテトラ型ティーバッグを3つ天井から吊るしておきます。エンクロージャー内部がとてもいい香りです。
ユニットの取り付け
今回用意したユニットはAliExpressで購入したものです。USC-M7のPCDが115mm強なのでそれで使えそうな物を選びました。本当はFOSTEXのFF105WKを使いたかったんですが今回は実験と言う事でお安い中華ユニットにしました。
このユニットですがスペックを見ると再生周波数帯域が75Hz~20KHzだそうです。…デュアルコーンなので帯域が広いんでしょう。
実はUSC-M7に搭載されているユニットは10㎝クラスとは言え少し大きめでエンクロージャーの開口部も大きめです。そのため一般的な10㎝ユニットを取り付けると隙間が空いてしまうのでガスケットをかませます。 コイズミ無線で購入した旭産業 10cm用ガスケット OEM-10を使いました。
ネジ穴の位置はユニット・ガスケット双方とも微妙に合わないものの何とか取り付けられます。ガスケットは底辺に接する部分を少し切ればより自然に取り付けられますが良い具合に変形してちゃんと納まりました。
調整
しばらく鳴らし込んでよく音を聞いてみると高域の不自然さは消えました。ただ中低域以下が濁ると言うか弛んだ感じでどうもパッシブラジエーターが動き過ぎる気がします。
パッシブラジエーターとして使っているユニットの+と-をショートさせれば改善できるそうですがそうするとパッシブラジエーターとしての旨味が無くなるように思います。ショートではなく抵抗を入れる手もありますがそれだと全帯域一律に作用するのでちょっと嫌です。
と言う事で丁度3.3μFのフィルムコンデンサがあったのでそれを繋いでみようと。100Hzで482Ω、1kHzなら48Ωです。
フィルムコンデンサにファストン端子をはんだ付けしてそれをパッシブラジエーターに取り付けます。
早速音を聞いてみると濁りは改善されました。不自然さは無くなり低域の不足も感じられません。後はコンデンサの容量次第なんでしょうが適当な容量がわかりません。高容量にして制動させた方が良さそうですが。*3 近いうちにいくつか試してみたいと思います。
一先ず完成
スマホのスペアナで簡易測定してみると全体的にはフラットに近いゆるやかなかまぼこ型です。低域は120Hzあたりにややピークがあってそれ以下はゆるやかに下がり35Hzあたりで持ち直す感じです。
高域は6.6kHzあたりにややピークがありそれ以上はダラ下がりですがツイーターの働く15kHzで一旦持ち上がって20kHzを超えると急激に下がります。ツイーターの限界がやはり20kHzあたりみたいなのでスーパーツイーターの様にはいきません。まあ聞こえませんしね。
また10kHzから15kHzに谷がありますが高音に不自然さは感じません。フルレンジの高域補完としては問題なく機能しています。この谷を解消するにしてもツイーターの音質を考えるとクロスオーバー周波数を下げるよりフルレンジユニットをもっと高域まで伸びる物に変更する方が良いと思います。
低域はパッシブラジエーターのコンデンサ容量見直しでもう少し伸ばせると思いますが、そもそもこのサイズなので本格的な低音はサブウーファーを導入する方が無理が無いでしょう。
改造前に比べて高域の硬さが取れ中高域の響きが綺麗になりました。低域は少し減りましたがパッシブラジエーターの効果でバスレフポートを塞いだ割には減少していません。
取り合えず実験は成功と言ったところでしょう。パッシブラジエーターでフルレンジを最大限活かしつつツイーターで高域補完すると言う方向性は間違ってないようです。
パッシブラジエーターに接続するコンデンサ容量を見極めた後でFF105WKに換装しましょうかね。