キーボードも稼働パーツのかたまりなので何らかの潤滑は必要になると思います。1個作っただけで玄人気取りです。
必要性はともかくスタビライザーの音が少し気になるので何とかしようかと。今まで使っていたキーボードだとそれ程スタビライザーの音は気にならなかったんですが…
スタビライザーの音対策
今のキーボードのスタビライザーの音は、軸がバーを引き上げたり押し下げたりする度に軸とバーがぶつかり打撃音がするのが一番の原因だと思います。なのでその対策をオイルとグリスで行います。
音対策だけならグリス山盛りが良いとは思いますが、打鍵感がグリスっぽい湿っぽい感じになると嫌なのでグリス控えめでいきます。
プレート設置でバーがプレート裏になるスタビライザーの注油ポイントは大きく3点あります。土台がバーを掴んでいる部分と軸と土台の接触面、そして軸がバーを捉えている部分です。基板に設置するタイプも構造は同じなので注油ポイントも同様で、プレート表に設置するタイプだと土台がバーを掴んでいる部分とキーキャップに取り付けるバーを捉えるハンガー部分の2点です。
オイルとグリスはシリコーン
一般にはシリコンオイルやシリコングリスなんて言われたりもしますが、正しくはシリコーンです。シリコーンは_silicone_、シリコンは_silicon_と別物です。シリコンとは違うのだよ、シリコンとは。
今回買ったグリスはシリコングリス(シリコンOリング専用)
となっていて主成分:シリコーン
… 英語表記はSILICONE
で統一されてるんですけどね。*登場するシリコンは全てシリコーンです。
話は逸れましたが、何故シリコーンオイル・グリスを使うかと言うとゴムやプラスチックへの攻撃性が極めて低い*2ためです。スタビライザーもバーを除けばプラスチックですし、その下の基板もフェノール樹脂かエポキシ樹脂でしょうし、プラスチックを傷めないためにもシリコーンを使うのが安心・安全です。
使うオイルはエーゼット 糸道用シリコーンオイルと言う物ですがその名の通り糸用でミシンで使うものです。仕事用の物を少し拝借。
グリスはSEA&SEA シリコングリスをヨドバシ.comで購入。少量で良かったのと放熱用は色々入ってるのでそれ以外で探した中でチューブデザインが良いので。*3 販売しているSEA&SEAと言う会社は水中カメラ・水中撮影機材メーカーと言う事なので製造はしてないでしょうが、機材屋さんが選ぶ物は確かだと思います。
まずはオイルを注す
対象キーのキーキャプを外すだけで直ぐに注油できます。念のためUSBケーブルは抜いておきます。
スタビライザーの土台がバーを掴んでいる部分に注油します。グリスでも良いんですが組み立てた時にガタつきが無く回転もスムーズだったので、今回は台座の摩耗を防ぐのにオイルのみで十分と言う判断です。多分この部分は音を立ててません。
注油にはインジェクターと言う…要するに注射器を使います。針でピンポイントに注油できます。
注射器にオイルを入れるため針から吸い上げようとしたところ全く吸い上げられません。オイルの粘りのためなのか仕方ないので針を外して吸い上げます。針を付けたところで確認すると射出?*4は問題ありません。
注油ポイントがプレート裏に隠れて見えませんが表から見えているバーに注油できればバーを伝って油が回ります。シリコーンオイルは馴染みにくい分表面を伝いやすいです。
真打グリスで音対策
グリスを注射器に入れるためにグリスのチューブを見て考えると、やはり針から吸入が自然に思えてついやってしまう。チューブをアンプルに見立てて逆さにして私、失敗しないので
そんな感じでやるんですが。やるんですがね。
うんともすんとも言わねーわ。
仕方ないので針を外して注射器をチューブの口に押し付け吸引するとグリスがニュルニュルとシリンダー内に入ってきます。適量で止めて針を付けてピストンを押してもなかなか出てこない。予め少し出しておいてそれを注すようにします。
グリスを注す場所は軸と土台が接触する四隅と軸とバーが接触する部分です。前者は簡単ですが後者は勘頼りに針を差し入れてなんとかと言う感じです。それでも一応グリスは注せます。
分量はそれ程多くする必要もないでしょう。軸を上下させながら音を聞いてるとある程度のところで頭打ちになるのでその辺りで止めておきました。
軸を引っ張り上げても自重で降りないぐらいには注しました。
スタビライザーは静かになったのか?
結論から言えば静かになりました。
とだけ言うと語弊があるので補足すると、音その物は小さくなっています。注油前と比べれば静かになっていますが、未だスタビライザーはその存在を示すがごとくカシャンと音を立てます。
スタビライザーの音は2種類
今更ですがスタビライザーの音が2種類ある事に気づきました。キーを押し下げる時の音と、キーがバネで戻った時の音。どちらかと言うと後者の音が大きく、今回の対策は前者により有効で後者にはあんまり…ですかね。
ただ、どちらの音も確実に小さくはなっているのでやるだけの価値はあるように思います。スタビライザーの振動も減って打鍵感も良くなっています。
しかしスペースバー
今回の対策がスタビライザーの発する2種類の音にそれなりに効果がある事は前述の通りですが、スペースバーに限り例外でキーがバネで戻った時の音が大きくなってしまいました。
スペースバーを離す度ガシャンと金属音がします。タイプライターじゃないんだから。
かなりの長尺である事。使っているキースイッチのバネが強めである事。この両方に原因があると思います。
全くの推測になりますがこの音のベースが反響音らしき事を踏まえると、長尺によりプレートが反響しやすいと言う点が影響していると思います。
プレートには左右にわたり細長いスリット状の孔が開いています。これが反響を生み音を増大させているように思います。弦楽器の胴体と同じです。
スイッチのバネが強いと言う事はキーの戻った時の衝撃もそれだけ大きくスタビライザーは通常より大きい音を立てます。そしてそれを通常より大きく反響させるプレート、しかも潤滑によってキーの戻りがよりスムーズになった事から衝撃が増大して…と言う推測です。
とすれば孔を塞ぐか何か詰めれば少しはマシになると言う推測も成り立つわけで。
孔を塞ぐ効果
思えばこの孔のおかげでキーボード組み立て時の重大なミスからリカバリーできました。正に光明を見出した思いで大変感慨深く未だについ先日の事のようです。先日の事ですが。
完全に封印してしまうのは忍びないので脱着できるようにします。スタビライザーが破損すれば必要になる孔ですしね。
何で穴を塞ぐかと言うと今回はシリコーン推しなのでシリコーンで塞ぎます。脱着性を考えてシリコーンチューブを押し込むと言う手法を取ります。
このためにシリコーンチューブをAmazonで購入しました。内径4mm 外径6㎜のチューブです。
実はこのチューブが届く前にグリスが良い感じに回ったのかスペースバーの音が静かになりました。ええ、静かになりました。
ところで孔を塞ぎます。チューブを適当な長さに切ってそれを押し込むだけです。
使ったのは外径6㎜ですが8㎜の方が良かったかも。早速試してみると… ちょっと感動します。かなり響かなくなっています。とは言えまだ他のキーよりうるさいんですが。ですが、反響音は小さくなりました。思い付きでもやってみるもんです。
孔を塞いだ事による音漏れの低減とプレートのビビリ低減ができているように思います。他のキーの音も多少違うように聞こえるのは流石にプラシーボ効果だと思うんですが、ひょっとすると一際大きい開口部が塞がった事による影響かも。
で、プレートと基板の間にも嵌め込めば効果ありそうなんて事をまた思いついたんですが、私はそこまでキーボードの音は気にならないのでやりません。新しく作るとしたらやるかも知れませんが。
最後に
グリスの効果が思ったより遅れて出てくるようで現在グリスを注したばかりの時より各スタビライザーは静かになってます。グリスが回るまで結構タイプしないとダメなのかも。組み立て時にやっておいた方が良いですね。
ともあれこれで一先ずメンテナンス終了です。また使いながら気になる事があればその都度手を出していこうかなと思います。
実はキーキャップも少し気になるんですよね。アローキーの印刷がもう剝げてきたり… 1,000円のキーボードでもそんなことないと思うんですけど。モディファイアキー等の黒いキーキャップは元々印刷が薄めで心許ないです。グレーの文字キーの方ははっきりした印刷なんですが、これもちょっと印刷ムラと言うか剝げそうなのがいくつか。
いっそキーキャップをもう1セット買って… これが沼と言うやつか。